こんにちは。漆畑です。
6月よりデコラ各店で『YUICHI TOYAMA.』というブランドを新規でスタートすることになりました。デコラカスタマーの方にとっては初耳という方もいらっしゃることでしょう。そこで私はデザイナーの外山さんに直撃インタビューをおこなってまいりました。さまざまな質問をしていく中でブランドの世界観をお伝えできればと思います。
漆:それでは外山さん宜しくお願い致します。
そもそも眼鏡業界に入るきっかけからうかがっていきましょうか。
外:僕は高校が私服の学校だったんですね。で、学校終わったら渋谷に繰り出してショップを冷やかし回すという日常を送っていて、ファッションやカルチャーに関する新しい情報なども自然と友人やショップの人から入ってきて、友人の1人がやたら眼鏡にこだわっている奴がいましてね。20年以上前ですけどジェームズディーンが愛用していたタートみたいなやつを掛けていたんです。それがすごくカッコよくて、無理言ってその友人に譲ってもらいました。眼鏡をオシャレなものとして見るようになった最初のきっかけです。以来、冷やかしショップのリストに眼鏡店も入るようになりました。それからデザインの専門学校へ入ったときにプロダクトを専攻しました。就職先として眼鏡メーカーが選択肢になったのは学生時代の友人関係の中での経験が大きいですね。
漆:で、眼鏡メーカーのムライさんに入社するわけですね?
外:はい。いろいろ眼鏡メーカーをあたった中で唯一声をかけてくれたのがムライで、面接へ行ったときに最初に応待してくれたのが森山さんでした。
漆:えっ?!森山さんって今ボビーシングススタンダード手掛けているあの森山さん?
外:そうなんですよ。ムライでの仕事を通じてモノづくりのノウハウを学んだ後に自分のブランドを立ち上げた仲間は森山さん、それからマサヒロマルヤマの丸山くんなどがいます。なんだか同じ学校を卒業したような感じですね。
漆:今アブラの乗ったデザイナーが目白押し!
外:ムライではいろんなライセンスブランドに関わって多くの勉強をさせていただきました。当時のムライの社風には心から感謝しています。
漆:眼鏡のデザインに本格的に入ったのはいつ頃でしたか?
外:最初は来る日も来る日も丁番ばかり描いていて、1年以上経過してから◯ウジ◯マモ◯の仕事をもらったのが最初の本格的なデザイナーとしての仕事でした。先輩の仕事を横目に、溜め込んでいたアイディアをいよいよ使えると意気込みましたね。幸い社内でも初仕事が評価されて、以降デザインの企画から全体を見るポジションも任されるようになりました。
漆:ムライ在籍期間は何年くらいになりますか?
外:12年間お世話になりました。
漆:長かったんですね。どんなブランドに関わってきたのですか?
外:◯ウジ、アレキ◯ンダー・◯ックィーン、◯クター&ロルフなどその他にも当時のムライはライセンスの仕事がとても多かったです。
漆:◯ックィーン?!私、20年くらい前ですけど量販店で勤めていた頃にどこかの洋服屋で◯ックィーンのサングラスを買いました。ライセンスものとは思えないユーモラスでクールな変則ティアドロップで、、もしかして外山さんそのモデルに関わってます??
外:!!不思議な縁ですねぇ。そのモデルはたしか◯ックィーンのファーストコレクションでした。やっていてとても面白かった記憶があります。デザイナーからこういうデザインをしたいというラフがあがってくるのですが、眼鏡の専門デザイナーではないので難易度お構いなしに無理難題を投げてくる。そのアイディアをできるだけそのまま形にしようと取り組んだ作品でした。ライセンスものを作る難しさはそういったところにあるのですが、ムライという会社はチャレンジする気風があって、簡単に諦めなかったんですね。どうやって形にし、なおかつ売れるものにするのかというせめぎ合いはとても楽しかったです。
漆:なるほど。それが今に繋がっているのかぁ。縁を感じるなぁ。
やがて市場では眼鏡セレクトショップの存在感が大きくなってくるわけですが、そこではライセンスブランドを扱わないことがある種の暗黙のルールとなっていて、そんな中でそこに身を置く外山さんが意識したブランドなどはありましたか?
外:はじめてオークリーのワイヤーシリーズをみたときはその構造美に衝撃を受けました。そこで機能性からくる構造美について意識を向けさせられて、フォーナインズの“掛け心地”を前面に押し出した新しい訴求スタイルは凄く鮮烈でした。デザイン以外のパッケージやメッセージの大切さを考えるようになりました。
漆:たしかにフォーナインズが世に出てきたときの衝撃は凄かったですね。一気に消費者の目線をセレクトショップに向けさせました。私たち世代の中にはどんなに意匠的にオシャレであっても“眼鏡は道具である”という意識がいつもどこかにあるのはフォーナインズに見事に刷り込まれたから(笑)
外:自分が独立へと向かうのもそんなインディペンデントなブランドをいろいろ見る中で、内部にいたら材料の問題やライセンスにまつわる制約などで表現の幅に限界を感じたからで。
漆:それからUSH(アッシュ)を立ち上げるわけですね?
外:ムライ退社後はしばらくフリーでいろんな仕事をやりました。まずは自分のブランドを作る資金を作らなければと。
漆:フリー時代は年間どのくらいのデザインを請け負っていたのですか?
外:今となってはちゃんと数えられないですが、ざっくり年間500型は描いてたんじゃないですかね~(笑)
漆:すごい!それは相当なトレーニングにもなっていますね。アッシュを立ち上げたのはいつ頃?
外:フリーを5年やってからです。だから17年目でようやく自分のブランド出せたんですよ。でもグラッシーズさんにはずっとやってもらえなかったですけど(笑)
漆:、、、はい。でも展示会では頻繁にチェックしていて、どんなモノづくりをされているのかはいつも気にしていました。ただ既存でお付き合いのあるブランドとどこかバッティングしてしまうなというのは感じていまして。。
外:僕の中でも自分の色が出し切れていないことは感じていまして、それを痛烈に自覚させられたのは5年前はじめてシルモに出展したときです。森山さんと丸山さん他数名で「Tokyo EyEs」という東京発信を打ち出したブースを作って、それぞれのブランドで出展したのですが、自分のブランドが認知されていく手応えがなくTokyo EyEsという一つのブランドかと思われたり、デザインを買われていくというより日本製の安心感で買われていくような感覚もあったり。その経験を踏まえて試行錯誤の上で各々ブースを構えるようになりました。
漆:なるほど、YUICHI TOYAMA.誕生の背景にはちゃんと凹まされた経験があるのですね。
外:ええ、それから自分らしさとか自分じゃないとできないデザインというものをもう一度考えるようになりました。それがシャドーシリーズという影をテーマにしたサングラスです。
SHADOWシリーズ 高度な表面処理技術によって一枚のレンズの中に変化を付けることで陰影を表現。ミステリアスでポップな独特の表情が生まれる。
漆:2年前のシルモのときに単独ブースで出していたコレクションですね。
外:そうです。そのとき漆畑さんも見に来てくれましたよね。
漆:ええ、あのコレクションを見たときに外山さんの中で何かが変わったと感じました。実はさっきの◯ックィーンのサングラスをフワっと思い出したんです。どことなく空気感に通じるものがあると。繋がっていたのはさっき知りましたけど(笑)
外:へー!そうでしたかぁ。あのコレクションから意図的にリミッターを外すような意識が形に現れてきて、海外での評価がデザイン面で認められる実感もあったのです。
漆:まだそのときのブランドネームはアッシュでしたね?
外:はい。ただ、この頃から並行して受けていた外部の仕事もほぼ無くしていきました。この過渡期にブランドを再構築し、本格的に自身のブランドと向き合うためにブランド名も変えようと決心しました。もうデザイナーの仕事をはじめて気がつけば25年経っていましたし、あと何回コレクション出せるだろうと考えたら振り切ったデザインについても自然と考えるようになりました。そうして取り組んだのが昨年発表したダブルダッチコレクションです。
DOUBLE DUTCHシリーズ 縄跳び遊びからヒントを得た一筆書きのようなライン構成が斬新。繊細なカラーワークも細やかな手仕事によるもの。
漆:私たちにとってもそれがいいタイミングでした。シャドーもダブルダッチも他のブランドとは全く被らないし、取り扱いを開始するきっかけにできました。最新コレクションのダブルダッチはとても斬新ですよね。感性がアジア的ではなく、インポートをみているようです。トレンドのクラシックなディテールが組み込まれているのに直観的な印象はとても未来的。そぎ落としの文化とストリートカルチャーもミックスされているような独特の雰囲気です。
外:僕らの世界の最大の褒め言葉は“良くできてるな~”なんですよね。“良くできてる”の中にはいろんな含みがあって、デザイナー同士だと他を評価したくないという気持ちがどこかにあるのですが、それでも思わず感嘆するにはちょうどいい表現で、自分のコレクションを見てもらったときに同業者にも“良くできてるな~”と思ってもらえたらいいなと思います。
漆:それにしても外山さん、このレコードのタワーすごいですね。何枚あるんだろ?
外:2000枚はあると思います。高校卒業してアメリカにブーツ履いて行ったんですけど、そのときにヒップホップの洗礼受けちゃったんです。なんかブーツ履いてる自分が恥ずかしくなっちゃって。みんなバンズやナイキ履いてるのにって(笑)。帰ってきてからすぐスニーカーとターンテーブル買って、レコード漁りも始まって。気が付けばこんなになってました。当時KRS ONEというラッパーに憧れて坊主頭にライン入れてたんですよ(笑)。
漆:信じられない!!でもデザイナーってどこか偏執狂的なところがあってしかるべきですから。ただ、元ヒップホッパーから今の女性的なコレクションは想像できませんけど(笑)。
外:(笑)。音楽からのインスピレーションというのも過去にいろいろやっていまして、これからコレクションに反映されるかもしれませんね。
漆:いやー、外山さんのデザイナー歴やバックボーンをいろいろうかがって、ブランドにより親近感が湧きました。長々とお付き合いいただきありがとうございました。これから宜しくお願い致します。
外:いえいえ、こちらこそ!ようやくお付き合いが始まるんだなと思うと自分も感慨深いです。今後ともよろしくお願い致します。
と、こんな感じでインタビューを終えました。
合間に面白い与太話がたくさんあったのですが、とても書ききれませんでした。
オフィシャルサイトでは得られない情報がいろいろ得られ、外山さんの人柄の一端も垣間見えたインタビューになったかなーと思います。
イベントまであとわずかです。YUICHI TOYAMA.お楽しみに。
(プレス 漆畑)
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